アレルギーにおいのコラム

鼻とアレルギー、嗅覚を専門としている医師、Fukumimiが、
鼻にかかわる様々なことについて、コラムの形で説明しています。

第1回

におい(嗅覚)の障害

このような症状で困っている場合、それはにおいの障害、嗅覚障害(きゅうかくしょうがい)と呼ばれる病気の状態である可能性があります。

においはどのようにして感じられるのか?~においの感じ方~

においは鼻の奥の方にある、嗅粘膜という特殊な粘膜で感知します。
ここは通常の粘膜とは違う、嗅神経という神経の先が嗅繊毛という形になって直接「外」(鼻の中の空気の通り道)に飛び出しています。嗅繊毛は粘液(鼻水)に覆われていて、無機物や有機物の分子(においの素)のうち、空気に乗って飛んでくるものが粘液に溶け込み、嗅繊毛の先にある嗅覚受容体に結合し、刺激された受容体からの電気信号が嗅神経を通って大脳に伝わることで「におい」を感じます。

嗅覚受容体はヒトでは約400種類あり、刺激される受容体からの信号のパターンや強度の組み合わせによって様々なにおいを嗅ぎ分けることができるのです。

においの障害(嗅覚障害)の分類

嗅覚障害はにおいを感じる経路のどこで障害がおこるかによって3つに分類されています。発症のきっかけや検査結果から分類していきます。

  1. ①気導性嗅覚障害
  2. ②嗅神経性嗅覚障害
  3. ③中枢性嗅覚障害

①気導性嗅覚障害

副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎、鼻中隔弯曲症などが原因となって、においが嗅粘膜に届くルートが遮断されることによっておこるものです。

②嗅神経性嗅覚障害

嗅粘膜に分布している嗅神経自体が感冒などのウイルス感染症や薬剤の影響などにより障害をうけて、においを感じにくくなるものと、転倒などで頭部を打った際に嗅神経の末端(嗅糸)がちぎれてしまうものがあります。

③中枢性嗅覚障害

頭を強く打つような事故などで脳挫傷をおこしてしまった後、または脳の病気(脳腫瘍,脳出血,脳梗塞)などが原因となった嗅覚障害です。パーキンソン病やアルツハイマー型認知症などの神経変性疾患にも嗅覚障害が合併することが知られています。

嗅覚外来を受診する患者さんの内訳は、約50%が鼻炎や副鼻腔炎の方、20~25%が感冒後嗅覚障害の方です。また、15%程度の方が原因不明といわれています。

嗅覚障害の診断

まず、検査の前に:

実は何よりも重要といえるものが「問診・アンケート」です。いつからにおいがわからなくなったのか、何か思い当たるきっかけはないか、どんな風におかしくなっているか、今服用している薬、他の病気の有無、こういった情報をもとに嗅覚にどんな障害がおこっているのかを探っていきます。

主に行う検査:

基準嗅力検査(T&Tオルファクトメトリー)

5種類のにおいが濃度別に8段階に分けられ、薄いにおいからはじめてにおいが分かるまで嗅いでいきます。わかった時点の濃度の平均値で嗅覚障害の程度を判定する検査です。

静脈性嗅覚検査(アリナミンテスト)

肘の静脈から薬剤を注射し、その注射薬が持つにおいが静脈から肺を通って吐く息の中に含まれ、それを鼻の後ろから感じるかどうかを調べる検査です。副鼻腔炎などが原因で鼻の入口からくんくんと嗅いでも全くにおいがわからない方でもこの検査で反応があった場合には、嗅神経はまだ残っていると予想できたりします。

嗅覚同定能力検査(オープンエッセンス)

12枚のカードに刷り込まれたにおいがなんのにおいかを、選択肢の中から選ぶ検査です。この検査はまだ研究段階のものですので嗅覚を特別に専門にしている医師のもとで行われるものです。

副鼻腔CT検査

副鼻腔炎や鼻中隔弯曲症があるか、嗅裂という嗅粘膜が分布する場所の形がおかしくないかなどを調べるために行います。

鼻腔ファイバースコープ検査

実際に鼻の中を診て、嗅粘膜の状態を確認します。

採血検査

血液中の好酸球の割合、アレルギーの有無、亜鉛の濃度などを調べるために行います。

嗅覚障害の治療

原因によって治療方法が変わります。

アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎が原因と考えられた場合にはそれらを治すことによって嗅覚障害が治るかをみていきます。鼻洗浄や点鼻薬、内服薬の処方で効果が無い場合は手術による治療をすすめることがあります。好酸球性副鼻腔炎という難治性の副鼻腔炎が原因でおこった嗅覚障害は手術などの後も定期的な内服や再手術を要することが多いです。

感冒後嗅覚障害に対しては漢方薬、ビタミン剤の内服が従来行われてきましたが、最近は嗅覚刺激療法というリハビリテーションが注目されています。感冒後嗅覚障害は数年粘ることで治っていくことがある疾患ですので根気よくリハビリを続けていくのが重要ではないかと言われています。